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環境に関する教育・研究と地域貢献

環境に関する研究

2.「生物を用いた環境汚染の計測」について

海事科学部 岡村秀雄

環境汚染を評価するためのアプローチの一つは、 化学分析によって環境試料中の有害化学物質を質的・量的に把握することです。しかし、 化学分析は存在が予想されるしかも分析可能な化学物質に対しては有効ですが、 環境中に存在する全ての化学物質を明らかにすることはできません。これに対して、化学物質に対する生物の反応性を利用した方法 (バイオモニタリング) では、環境試料の有害性から汚染の程度を知ることができます。この方法を用いて、 水や底質等の環境試料の毒性を迅速に評価し、対象水域の汚染の程度を判断することが期待されます。現在までに、 主として水環境の汚染評価のための生態毒性試験 (バイオアッセイ) を複数用いた手法 (バッテリーアプローチ) を活用しながら研究を進めています。供試生物として、細菌、微細藻類、甲殻類、魚類細胞、浮葉水生植物、陸生植物、 ミミズなど生態系の異なる栄養段階に位置する生物種に対する影響を評価しています。実際の環境の汚染評価としては、 琵琶湖集水域および岡山県児島湖集水域の農業地帯、雨天時の路面排水やトンネル洗浄排水、 香川県豊島の産業廃棄物不法投棄現場の浸出水、最終処分場からの浸出水、廃棄物を焼却後の灰残渣、船舶修繕ドック周辺の海水環境などについて、 また、農薬、染料、船底防汚剤等の化学物質の環境内運命に関しても研究を進めています。長い間、 防汚剤として使用されてきた有機スズ化合物は使用禁止となり、現在では代替防汚剤として農薬の誘導体であるイルガロールをはじめ16種類の化合物が使用されています。 イルガロールの環境残留濃度および環境生物に対する影響 (図1) から、現時点での残留濃度が無影響濃度を超過していることが分かります。 このように、開放系で意図的に使用される化学物質の環境管理のためには、残留の実態を知ることに加え、 生物に対する影響を明らかにすることが不可欠です。これを応用すれば環境汚染を生物を用いて計測することができ、 このような生物を用いた環境診断法は汚染を浄化 (治療) する際の物差しとなることが期待されます。

図1 有機スズ代替防汚剤イルガロールの環境残留と生物への影響

図1 有機スズ代替防汚剤イルガロールの環境残留と生物への影響

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