21世紀は「環境の世紀」と言われており、いまや環境問題は、新聞や雑誌、テレビなどのマスメディアによって取り上げられない日はないほど、我々の身近な問題となっています。
産業革命以来の科学技術のめざましい発展は、社会に豊かさや便利さ、快適さなどさまざまな便益をもたらしましたが、その反面、温室効果ガスによる地球温暖化、酸性雨による森林や湖沼の汚染、廃棄物による有害物質の発生など様々な形で大きな弊害が生じています。このような環境破壊の中で、地球温暖化の危機から脱却するために、1997年に京都で開かれた COP3 会議において、京都議定書は誕生しました。その後、125カ国で批准され、2005年2月に発効されましたが、合意した先進国は2012年までに基準年と比較して、CO2 を全体で5.2%の削減を目指すこととなっており、日本の削減目標は6%となっております。
一方、エネルギー消費量の問題も極めてシリアスな状況になってきております。今後、50年後に地球の人口が約90億人に達するものと推定され、それに伴ってエネルギーの需要量も著しく増加し、すべてが日本人並の消費量とすれば現在の必要エネルギー量の3-4倍も必要と推算されています。加えて、エネルギー資源の枯渇も大きな問題となり、こうしたエネルギー消費と環境保全のバランスをどのようにとってゆくかが、環境問題におけるもう一方の課題となっております。
このような複雑な課題を解決し持続可能な社会を構築するためには、何よりも我々一人ひとりの意識及び行動、さらに組織力としての変革が必要であると思います。
神戸大学では、この環境報告書に記載されているように、2006年に環境対策に対する基本理念と基本方針を定めた「環境憲章」を策定し、その方針を基本として省エネルギー、省資源?リサイクルなどを促進するための環境マネージメントを着実に実施してきております。特に、2004年4月に従来の水質管理センターを改組し設立された「環境管理センター」では、実験排水の処理、ゴミの分別などの管理を始め、教職員に対する環境問題の啓発活動を積極的に行っております。学生の教育に対しても、本年度から全学共通授業科目として、「環境学入門」が開講されます。
また、本学では、これまで環境問題に関するさまざまな教育や CO2 削減のための科学的および経営的な見地からの研究や健康被害に関する研究にも取り組んでおり、地域との連携も推進しております。私は、このような多様な学術分野において活躍されておられる研究者を統合した学際融合研究も推進したいと思っております。今後、神戸大学における様々な成果を世界に発信し、国際社会及び地域社会へ貢献してゆく所存でございます。