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第三者意見

神戸大学での環境報告書は、2006年以来毎年発行され、今回で4回目となります。年ごとに内容が充実しており、何よりもそのご尽力に敬意を表したいと思います。

「環境報告書2006」によれば、これまで環境に関連した授業科目数が170を超えていましたが、それに加えて、2009年度より全学向けの総合科目として「環境学入門」が開講されることになり、「環境に関する教育」のさらなる充実が期待されます。

これまでの環境報告書を合わせてみますと、神戸大学には環境問題に対する世界に誇れる教育研究、技術やそのシーズ ( 技術の種 ) があることを学内外に情報発信する機会になっていると思われます。今後、それがまとめられ公表されれば、学生?市民?企業?行政などとのさらなるコラボレーションへと発展していく可能性があると思われます ( たとえば、嘉門雅史他編『京都大学における環境科学技術分野への取組』 ( 京都大学研究推進部、2008年4月 ) のなかでは、京都大学における環境科学技術分野の研究の一覧表と概要、文部科学省が推進すべき研究開発課題、第3期科学技術基本計画の政策目標などが掲載されています ) 。

環境報告書では、学生たちの地道な環境活動が報告されています。近年「キャンパス?エコ」として、キャンパス内での学生による楽しそうなエコロジー活動が報道されていますが、それらの活動は、その輪を広げ、学生の環境意識の高揚や人材育成につながり、さらに社会人として大きく開花していく可能性があると期待されます。

本報告書では、「環境パフォーマンス」のなかの「各部局及び関係組織の取組」として、「工学研究科省エネWGの活動」があり、その主な活動として、省エネのための巡視、省エネ対策、電気量の自動測定 ( 課金 ) といった取り組みが紹介されています。それは、今後の各部局による取り組みの先進的事例になると思われ、その意味で高く評価できます。

「環境パフォーマンス」のなかの「省エネルギー?温暖化防止」「省資源?リサイクル」「有害物質の管理及び対応」では、具体的数値が掲載されています。そのような「見える化」に加えて、その数値の時系列表示があれば、取り組みの効果が明示され、今後の目標設定などがしやすくなると思われます。

「環境パフォーマンス」のなかの「省エネルギー?温暖化防止」においては、「神戸大学は、延床面積当たりのCO2排出量を年1%削減することを目標としています」とあります。神戸大学は総合大学として多くの学部があり、全学的に共通した取り組みを推進していくには難しさがあると思われます。それにしましても、年1%削減という目標数値は、京都議定書での日本の6%削減、その後の「2005年を基準に15%削減」という日本の数値から鑑み、低いのではないかという印象を抱かざるをえません。可能であれば、現状から考えられる方法の延長で将来を考える「フォアキャスティング手法」ではなく、目標とすべき将来の姿を想定し、そこから現在の対策を考える「バックキャスティング手法」に基づく目標設定とそのための取り組みが期待されます。

 また、環境マネジメントにおいては、目標実現に向かっての PDCA サイクルによる継続的改善が求められていますが、今後それを可能にするシステムなどの確立が望まれます。それによって、神戸という国際都市にある神戸大学が、日本や世界の大学の環境フロンティアとなられることを期待したいと思います。
 
甲南大学経営学部教授:中丸寛信
氏名
中丸寛信( なかまるひろのぶ )
現職
甲南大学経営学部教授
プロフィール
1976年、神戸大学大学院経営学研究科博士課程単位取得満期退学。

1976年より鹿児島国際大学、1980年より長崎県立大学を経て、1992年より現職。

宝塚市廃棄物減量等推進審議会会長。

主著に、『地球温暖化と環境マネジメント-解決のための新しいアプローチ-』 ( 千倉書房、2009年 ) :「環境経営学会2009年度学会賞?学術貢献賞受賞」、 『地球環境と企業革新-根本的解決に向けて-』 ( 千倉書房、2002年 ) などがある。

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