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温室効果ガス排出量に大きく影響するのは、やはりエネルギー消費量です。現在の地球人口は60億人を超えており、2050年には90億人を超える人口爆発が起こると予想されております。エネルギー消費量も世界中の人々が日本人と同等の消費を行うと仮定すると、現在の2.2倍ものエネルギーを消費し、温室効果ガス排出量は飛躍的に増大すると考えられます。

前総理大臣の鳩山由紀夫氏は、就任早々、2009年9月の国際連合における演説の中で、我が国の温室効果ガス排出量を条件付きで2020年までに対1990年比で25%削減すると表明しました。この表明に関し、日本の負担が大きくなり、国内の雇用や国民生活への悪影響、さらに経済や財政の崩壊に繋がる等の懸念が出ています。
 というのも、従来より日本の企業は他の世界各国の企業に比べ、省エネルギー化に対しては著しい努力を行い、高い効率化を実現してきたので、最早限界に達していると見られているからです。その上、目標を達成できなかった国は、温室効果ガス排出権を購入することが認められているものの、1990年を基準として温室効果ガス排出量の大幅な削減が達成され、余剰排出権を持つ国には極めて好都合な仕組みとなっています。

政府はまず、目標を達成するための長期ビジョンや施策等を速やかに明確化することが必要です。そして、その計画を達成するための技術課題について、例えば風力、水力、太陽エネルギー、バイオマスエネルギーなどの持続可能で実用可能な再生エネルギー開発やさらなる省エネルギー化のための技術開発を産?官?学が協働して取り組まなければなりません。もとより、国民の省エネルギー意識の一層の高揚とともに国民全体が一丸となった取り組みが必要であろうと考えます。

古い話になりますが、1970年代当時、ガソリン乗用車から排出される窒素酸化物の排出量を90%以上削減するという規制 ( いわゆる日本版マスキー法 ) は、技術的な困難や競争力の低下等を理由に経済界からの強い反対がありましたが、結果的には、企業の血のにじむような努力のおかげで、排出ガス低減技術の開発に成功し1978年に当初目標通りの規制が実施されました。このような革新的な技術開発の成果等によって、日本の自動車製造技術は省エネルギー化や排出ガスのクリーン化などにおいても世界の自動車産業界をリードし、今日の繁栄に至っております。

当時とは、社会の状況や科学技術力の違いにより、単純に比べることはできませんが、私は神戸大学における個々の分野を融合し、できる限り力を集結し、25%の高いハードルに挑戦をしてゆくことは、地球環境を保護し発展させる国として世界をリードすることが可能になると考えています。

神戸大学長福田秀樹

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