「環境学入門」の講義を開講して ― 学生による神戸大学の環境報告書の評価 -
環境管理センター 助教 吉村 知里
「環境学入門」の講義を開講して
環境管理センターが主体となって共通教育科目「環境学入門」 ( 総合科目II ) を2009年度後期に初めて開講した。履修者は116人で、当初の予想を超えた多くの受講生が集まり、熱心に講義に参加していた。受講生の内訳は、図1および図2に示すとおりで、幅広い学部?学年から履修者を集めた。
講義は、神戸大学のほぼすべての学部から環境に関する教員が参画し、オムニバス形式で実施した。前半が主に理科系教員による授業で、後半が社会科学?人文系教員による授業、またパナソニック株式会社の環境本部の大西氏を招き、「企業の環境対応」についての講演も含めた。各回の担当教員は他専攻の学生になるべく理解と興味を得られるように専門用語の多用を控え、資料の写真や図、最近のニュース話題を豊富に用いた。各回90分と限られた時間内ではあったが、導入部から最近の研究までの講義は、学生が「環境」をキーワードに他分野の研究にも好奇心を懐いたようであった。さらに、理系の学生は社会?人文系の授業に、社会?人文系の学生は理系の授業に興味を持つ傾向があり、文理融合の環境学入門の意義があったと判断できる。また、学外講師のパナソニックの方の講義は企業現場でどのような環境対応が行われているのかについて学生の強い関心があることも示された。
学生による「神戸大学の環境報告書2009年」の評価
受講生に“神戸大学の環境報告書2009年版を評価せよ”とレポート課題を出した。比較対象は、2006年から3年分の神戸大学の環境報告書や他大学の2009年の環境報告書を選択し、省エネルギー?温暖化防止や省資源?リサイクルおよび教育?研究などの項目について自大学を評価させた。結果、「今後に期待する」、「ある項目は“良”、しかしある項目は”改善すべき“や、”目標に達していない“」が大半で、“概ね高く評価する”は少数だった。また、環境報告書の存在を初めて知る学生が大多数で、広報の不十分さが窺えた。
比較対象の大学は近隣の総合国立大学 ( 大阪,京都など ) を選択する学生が多かったが、地方出身者は地元の大学を選んでいた。学生の評価対象項目は、環境パフォーマンスの省エネルギー?温暖化防止、省資源?リサイクルに集中していた。そして、他大学の実績のある省エネルギーやリサイクル活動には真似るべき点があり、今後の取り組みに追加することが望ましいとの意見が多かった。また、神戸大学の環境報告書に示されている取り組みが、学内で周知されていない点や認識の薄さが学生の目には映っているようだった。もちろん、「延床面積当たりの二酸化炭素排出量を年1%削減すること」が目標にしては低いと厳しい意見も多数あった。
変わった着眼点では、表紙のデザインや見易さ、頁数を比べ好感度を論じていた。読み手を誰にしているのか明確でないために、一覧して分かり難いとの指摘や入学時に環境報告書を配布する案、過去の記事についての経過報告、目標不達成に対する説明などの要望や意見もあった。
自大学の環境報告書を知ることによって、大学生活を通して学生自身が何を意識して、どの様に行動するのか方向性を見付けたようで、小さな身の回りからこれから出来ることを実践したいとレポートの最後に7割ほどの学生が述べていた。全学部生 ( 約12,000人 ) に対して約1%の学生が受講したことになるが、今回のレポート課題で、学生も教職員も得たものは大きいと感じた。
引き続きこの講義が開催され、受講者数が増加し、神戸大学の学生は環境に関して多角的視点で考え、より良い方向に行動に移せる形で社会に拡がることを願う。
- 「ガイダンス」國部 克彦 ( 経営学研究科 )
- 「環境と生態系」武田 義明 ( 人間発達環境学研究科 )
- 「環境と人体」堀江 修 ( 保健学研究科 )
- 「環境と生命」星 信彦 ( 農学研究科 )
- 「環境と地域」林 美鶴 ( 内海域環境教育研究センター )
- 「環境と資源?エネルギー」上田 裕清 ( 工学研究科 )
- 「環境と化学」佐々木 満 ( 農学研究科、環境管理センター )
- 「環境倫理とは何か」松田 毅 ( 必威体育研究科 )
- 「環境と経済」竹内 憲司 ( 経済学研究科 )
- 「環境と法?行政」島村 健 ( 法学研究科 )
- 「企業の環境対応」大西 宏 ( パナソニック株式会社 )
- 神戸大学環境シンポジウム『大学は地球環境問題にどう取り組むべきか』
- 「環境とコミュニケーション」米谷 淳 ( 大学教育推進機構 )
- 「神戸大学の環境対応」吉村 知里 ( 環境管理センター )
- 「太陽光発電システム」梶並 昭彦 ( 環境管理センター )