神戸大学環境報告書2014を読んで、世界の環境先進大学“Kobe Smart University”へ向けて着実な進展が図られていると感じました。特に、世界最高水準の環境研究を加速することに加えて、大学らしい人材育成に取り組んでいることに注目しました。
人材育成は関連する授業の実施などから始まりますが、効果が直ちには表れにくいこともあって、ともすれば形式的なことだけに終わりがちです。神戸大学では、講義に加えて環境報告書を読む会も開催されています。それに参加した学生が「神戸大学環境学生調査隊」を結成し、活動を開始しています。環境問題は実践的な取り組みの中から学ぶことが多いことを考えると、こうした活動は、きわめて貴重です。参加や行動へのエネルギー、そしてそれが生まれた契機を大切にしたいところです。環境保全活動のエネルギーや契機が創りだされる場、それをいかに構築するか、大学の真骨頂が問われています。
学長メッセージにも述べられている通り、学生の自発的な活動が、環境保全推進センターによる大学の組織的な活動と相まって、学内のみならず地域社会にも波及していくエコ?ウェーブが志向されています。ごみ問題への取り組みなどですでにそうしたウェーブは萌芽的に生まれているようですが、大学と地域社会の関係としても発展させられるべきであると期待を表明しておきます。
環境保全活動の具体的な成果を測る方法の1つは、活動に伴ってどのような変化が生まれたかを記録することです。環境保全活動に参加する輪が広がっているのかも知りたいと思いました。具体的な数値で気になった点は、CO2排出量についてです。平成25年度のCO2排出量は、平成24年度より8.1%増加しており、延べ床面積当たりのCO2排出量は、基準年度である平成16年度よりも10.1%増加していると報告されています。
そうなった主要な原因については、報告書に書かれている通り、福島原発事故後電源構成に占める化石燃料の比重が急増したため、電気のCO2排出係数が増加したことにあります。ただ、この数値が事故前の値に直ちに戻るのは難しいと思われます。にもかかわらず、「第2期中期期間(平成22~27年度)中に、「CO2排出量を原単位で15%削減」という目標を目指して取り組んでいきます」というには、何か追加的な取り組みが必要ではないでしょうか。
環境報告書の作成と活用が、創造的な環境保全活動を生み出す、きっかけとなることを期待しております。