低侵襲総合診療棟神戸大学の全キャンパスの中で医学部、医学部附属病院のある楠地区は電力、ガスともに最も多く消費しており、省エネルギー化が求められています。高度先進医療を提供する医学部附属病院においては、医療技術の確保と省エネルギー化の両立が求められ、無理のない効果的な省エネルギー方策を推進することが重要です。この研究では、省エネルギー化の可能性を検討するために、楠地区のエネルギー消費量を分析しました。
図1は楠地区で使用されている年度別の電力とガスの一次エネルギー消費密度(単位床面積あたりの値)です。平成22年度までは増加傾向が確認されますが、平成23年度以降は確認されません。平成26年度は、高度医療を提供する低侵襲総合診療棟が増設されたため増加したと考えられます。楠地区で消費されるエネルギーの約7割を第一病棟、中央診療棟、外来診療棟、低侵襲総合診療棟の病棟で占めており、病棟での検討が必要と考えられます。
図1 年度別の電力とガスの一次エネルギー消費密度
図2は各病棟の月別電力消費密度(一次エネルギー)です。一年を通してほぼ一定のベース部分と主に夏期に増加している変動部分が確認されます。ベース量は全ての病棟で7~9割を占め、病棟により差が確認されます。ベース量には照明や機器が含まれ、変動量には空調(冷房)が含まれます。電力消費量の削減には、照明や機器の省エネルギー対策の検討が必要と考えられます。
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図2 各病棟の月別電力消費密度(一次エネルギー)
図3は病棟に供給しているボイラーと冷温水発生機で使用された月別ガス消費量(一次エネルギー)です。ボイラーは第一病棟、外来診療棟、中央診療棟に蒸気、温水を供給しています。冷温水発生機は外来診療棟、中央診療棟に温水、冷水を供給しています。ボイラーは給湯や蒸気として使用されるベース量が6~7割を占めます。冷温水発生機は冷暖房に使用される変動量が6~8割を占めます。夏期と冬期にピークが確認され、冷房と暖房の両方の省エネルギー対策の検討が必要と考えられます。
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図3 熱源別の月別ガス消費密度(一次エネルギー)