まずは、環境報告書の第三者コメントを執筆させていただく機会を得ましたことに対して、心より感謝申し上げます。本環境報告書2020には、神戸大学の環境に関する非常に興味深いたくさんの教育研究事例、環境パフォーマンスに関する詳細なデータに加えて、環境保全推進センターの意欲的な活動が記載されており、非常に興味深く拝見させていただきました。
研究の中では、化学を生業とするものとして、膜を用いた二酸化炭素の分離に関する研究にとても魅力を感じました。神戸大学では先端膜工学研究センターを開設され、膜工学の分野で突出した様々な研究をされておられますが、この技術がCO2の確固たる分離技術として発展し、大変な難題であるCO2排出量の削減につながっていくこと、そしてSDGsの達成に向けて重要なお仕事になるよう切望いたします。
環境パフォーマンスの過去5年間のデータを拝見すると、エネルギー、CO2、電気使用量など、ほとんどの項目で全体量が減少しており、継続的な省エネルギー推進活動が着実に実を結んでおられることに敬意を表します。大学(とくに国立大学)という組織では、本部執行部のガバナンスが強化されてきたとは言え、そこからの掛け声が末端まで浸透し、各種の取り組みを具現化することは非常に難しいことだと思います。加えて、エアコンや電灯なども、すでにかなりエネルギー効率の高いものに変更されてきておりますので、省エネルギー推進活動自体が一昔前に比べて容易いものではありません。その中で、着実に削減傾向を維持されていることは関係各位の不断の努力あってのものと推察いたします。一方で、前年度の環境報告書の第三者意見(京大?藤井滋穂先生)でご指摘があるように、それぞれの値が大学の規模を考慮した上で絶対量として適切な量であるのか、まだまだ削減の余地のあるものなのか、判断が非常に難しいところではあると思います。何らかの絶対的な指標とその比較などがあると、よりわかりやすいように感じました。
その他、廃棄物管理票(マニフェスト)の電子化についての項も非常に重要だと思いました。新型コロナ禍の中で、大学における電子化の遅れを、皆さんも実感されたのではないでしょうか。我々教員もwebを通じた遠隔授業に四苦八苦しましたが、それ以上に事務組織が未だにかなりの部分を紙ベースで仕事をしている現実をあらためて認識させられました(本学だけかもしれませんが)。ぜひ、このような電子化の取り組みを続けていただければと思います。
大学の非常に限られた予算の中で環境保全?管理に取り組むことが益々難しい時代になってきていると感じています。神戸大学は神戸高等商業学校からの120年近い伝統を受け継がれ、経済?経営を強みとする総合大学として、国内外にその名を馳せておられる大学です。お金をかけずに環境関連の課題に取り組むにはどうすればよいか?今後、大学経営と環境保全?管理という視点から示唆に富む取り組みをご紹介いただくのも魅力的かもしれません。