ESD サブコースの取り組み
人間発達環境学研究科ESDコーディネーター 高尾 千秋
ESD ( Education for Sustainable Development =持続可能な開発のための教育 ) をテーマとするこのコースは、文部科学省の「現代的教育ニーズ取組支援プログラム ( 現代GP ) 」 ( 2007年度~2009年度 ) の支援を受けて、発達科学部?文学部?経済学部が学部横断の取り組みとして展開してきた。2011年度より農学部の参加を得てカリキュラムを拡張し、4学部が協同し取り組みを進めている。
1987年のブルントラント委員会 ( 環境と開発に関する世界委員会 ) は、「将来世代のニーズを満たす能力を損なうことなく、現在世代のニーズを満たすこと」と持続可能な開発 ( Sustainable Development ) を定義した。そして、2002年ヨハネスブルグサミット ( 持続可能な開発に関する世界首脳会議 ) において、「持続可能な開発を促進するためには教育が決定的に重要である」として教育の重要性が示された。「環境」と「社会」と「経済」の調和のとれた社会づくりを実現するには、自らの考えを持って、新しい社会秩序を作り上げていく、地球的な視野を持つ市民の育成が求められる。このような経緯から、ESD が登場し、ESD の推進に向けて、日本政府の発案により、2005年からの10年を「ESD の10年」として国連で決議され、世界各国で多様な取り組みが進められている。
ESD サブコースは、三つの大きな特徴を持っている。一つには、従来型の「環境教育」の拡張を目指し、ESD に求められる課題の多様性に対応した汎領域的な視点でカリキュラムを企画している。文学部の「新しい倫理の形成」、「リスクマネージメント?防災」、経済学部の「持続可能な経済活動」、農学部の「食農実践」、発達科学部の「人間の変革可能性」など四つの学部の特色を生かした多様な領域からの学びを組み込んでいる。次に、学生が、地域社会の個々の活動現場に出かけ、学外の人々と連携しながら実践活動への参画 ( アクション?リサーチ ) を通して、持続不可能な社会や仕組みの問題性あるいは解決の方向性を探究する。学外のフィールドに出かけ、現場での学びやワークショップなど、参加?体験を重視している。そして、4年間で関連科目を含め14単位を取得することで、学生は卒業学位とは別に「ESD プラクティショナー」として認証を受けることができる。こうした特徴的な仕組みのなかで、個別の専門知に偏らない複眼的な視点、実際の問題を解決する上で求められる組織?集団の調整能力、および問題を解決する意志とスキルを持った人材の養成を目標としている。
図2 ESDサブコースのカリキュラム
現在、大学教育推進機構内に ESD サブコース推進検討委員会 ( WG ) が設置され、全学化の検討を進めている。