「環境にやさしい」をどう判断するか
人間発達環境学研究科 講師 田畑 智博
「環境にやさしい」。この言葉は、環境に配慮した商品や行動に対してよく使われています。キャッチフレーズとして使われていることも多いので、私たちが商品を買うときによく目にしているかもしれません。しかし、「環境にやさしい」とは、一体何をもってそう言えるのでしょうか?環境に配慮したあらゆる行動が、本当に「環境にやさしい」と言えるのでしょうか?これを判断する方法の一つが、ライフサイクルアセスメント ( LCA ) です。
発達科学部人間環境学科の1年生向けのオムニバス科目として「生活環境概論」がありますが、私はそのうちの一コマを担当して、LCAを用いた「環境にやさしい」商品や行動の判断の仕方を解説しています。ここで、LCA について説明します。LCA とは、製品の一生 ( 資源の採掘から製造、使用、廃棄まで ) をライフサイクルとして捉え、その中で排出される総合的な環境負荷を明らかにする手法です。例えば、ハイブリッド車はガソリン車に比べて燃費に優れ、使用時の二酸化炭素 ( CO2 ) 排出量は少なくなります。しかし、ハイブリッド車は電池製造の際に多くのCO2が排出されますので、製造時だけでみるとガソリン車の方がCO2排出量は少なくなります。そのため、ライフサイクルの一断面のみを捉えてあれこれ判断するのは、妥当ではありません。これに対し、LCAでは、ライフサイクル全体で排出されるトータルの環境負荷を捉えます。これを利用することで、本当に環境負荷の少ない ( 環境にやさしい ) ものは何かを考える際の判断材料とすることができるのです。
例えば、リターナブル容器と紙製使い捨て容器は、どちらが環境への影響が大きいでしょうか ( 図1 ) ?ある研究では、リターナブル瓶を5回再利用しただけでは、紙製使い捨て容器のほうが環境への影響が少ないとの結果が出ています。講義では、飲料容器の事例のほか、地産地消は本当にいいのか、プラスチックはどのようにリサイクルすべきかなど、LCA の研究事例を踏まえて解説しています。また、私が研究テーマとしている、廃棄物処理政策や、再生可能エネルギーの導入政策に関する LCA の応用事例についても、フィールドワークによる写真を見せながら紹介しています。
最後に、LCA の身近な事例として、近年、商品がライフサイクルで排出するCO2を LCA により数値化し、商品にラベリングするカーボンフットプリント制度が国内外で実施されています ( 図2 ) 。皆さんも、商品を購入する際に、このラベルを探してみてください。
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図1 どちらが環境にやさしい?
図2 カーボンフットプリント