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環境に関する教育研究

多自然川づくりのための水工学研究

工学研究科  教授 道奥 康治

近年の河川整備では、流れの制御や堰止め、堤防の防備をするために石礫?木材?植生などの透過性材料を用いた「伝統工法」の構造物が多く採用されるようになってきた。写真1は、自然石で作られた農業井堰の事例である。近代工法が導入される以前には各地で施工され、地域の自然と社会の風土?文化を反映し、時間と経験を経て定着した技術である。その意味で伝統工法には自然?社会環境への高い順応性を期待できる。コンクリート?鋼など人工材料を用いた構造物 ( 写真2 ) よりも隙間と透水性を有するために流れを柔らかく制御し、生物の生息空間を提供するなど生態系にやさしく周辺景観とも調和しやすい。反面、流れに対する耐荷力はコンクリート構造物より小さく、出水後のメンテナンスが不可欠である。しかし、これはかつての地域における恒例の共同作業であり、コミュニティーの結束力を維持する背景になっていた。このように伝統工法は自然?社会環境の両面で優れた機能を持つ。

往事の伝統工法は知識と経験に基づき、ベテラン技師達によって設計?施工されていた。しかし、伝統工法がさかんであった戦国?江戸時代に比べて、現在は河川が高度に利用され、守るべき資産が集積している。このような状況では、伝統工法を単に復古主義的に導入するのではなく、流れの科学原理に基づいて構造物に作用する流体力を正確に解析し、多自然川づくりのための最新技術に位置づけて研究開発に励む必要がある。写真3は明石川の流れを制御するために自然石で建設された11基の水制 ( 突堤のようなもの ) である。平成16年の台風23号洪水でこの中の4基が壊れたが、図1のように損壊した水制 ( 図中の赤丸数字 ) には大きな流体力が作用していることが流体解析でわかる。多自然川づくりに伝統工法をさらに応用するためには、自然材料で構築され複雑な性状を持つ河川構造物に対しても適用できるような水工解析手法を開発する必要がある。私たちは水圏環境に視点をおいた教育と研究活動を進めている。

  • 石で作られた堰<
    写真1 自然石で作られた堰
  • 人工材料で作られた堰
    写真2 人工材料で作られた堰
  • 明石川の水制群
    写真3 明石川の水制群
  • 明石川の①~?番水制に作用した流体力 ( 縦軸
    図1 明石川の①~?番水制に作用した流体力 ( 縦軸 )
    ( 赤は損壊、青は無事だった水制 )

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