科学技術イノベーション研究科 教授 尾崎 弘之
経済が成長すると大気や水の汚染、廃棄物の増加などにつながります。したがって、「経済成長と環境保全は両立しない」と一般に考えられています。また、水や土壌などの汚染防止、ゴミ処理、リサイクルなどの自発的解決は期待できないので、政府の規制や補助金が不可欠です。したがって、環境産業は公的なサポートを必要とし、市場原理では成り立たない「静脈産業」と呼ばれてきました。
ところが、地球温暖化が重要な社会課題となって以来、「環境産業=静脈産業」は古い考え方になり、新しい環境産業は補助金に頼らず市場原理で利益を出す「動脈産業」となりました。しかも、太陽光、風力、バイオマス、地熱などの再生可能エネルギー、電気自動車、LEDなどの省エネ機器、グルーンビルディング、蓄電池、シェアリングエコノミーなど成長産業として注目される分野が数多く含まれています。
環境省の『環境成長エンジン研究会』は、イノベーションによって環境保全と成長を両立させている企業の例を数多く調査し、分析結果を調査報告書として毎年公表しています。より多くの企業が環境ビジネスに取り組むキッカケを作り、一般の方々に環境産業のポテンシャルを知ってもらうことが目的です。筆者は専門分野であるベンチャー経営、イノベーション研究の見地から、研究会の報告書の委員に任命され、報告書作成メンバーとなりました。
2017-2018年の研究会では、「生物の特徴」を商品やサービスに応用したビジネスを調査対象としました。ここでは、日本ペイントマリン、ドウシシャ、積水化学工業の事例をご紹介します。