工学研究科 准教授 竹林 英樹
建物の運用時の省エネルギー方策を検討するためには、エネルギー消費量の実態の把握が重要です。適切な電力消費量の測定と分析は、省エネルギーの実践が必要とされる多くの既存建築物における共通の課題です。この研究では、神戸大学の各建物の電力消費量の測定状況を整理し、測定方法や測定箇所に関する課題を明らかにした上で、既存の時刻別電力消費量データを統計的に分類する方法を検討しました。
建物毎に電灯(照明やコンセントなど)と動力(空調など)が別々に計測されていることが望ましいのですが、対象とした94棟の中では11棟と少なく、建物毎に両者を一括して計測している建物は17棟、複数建物で両者を一括して計測している建物は66棟でした。
2019年度の366日を分析対象期間とし、電灯と動力は区別せず、各建物及び複数建物の合計38箇所で1時間毎に計測された電力消費量を24次元の多変量データとしてクラスタ分析を行いました。平日を多く含む平日クラスタ、土日や祝日を多く含む休日クラスタ、日平均気温が27℃以上や10℃以下の冷暖房負荷が大きくなる気象条件を多く含むクラスタ、が多くの測定箇所で確認されました。図1~3に分類結果の例を示します。全体では、計算機計測室型、研究室型、食堂型、教室型+研究室型、教室型+食堂型、特殊型、事務室型、図書館型、教室型の9つに分類されました。
4つの時刻変化の特徴量(平日クラスタの最大値、最小値、日較差、休日クラスタの平均値)を用いたクラスタ分析により、測定箇所が5つのクラスタに分類されました(図4)。クラスタ5には機器が常時稼働する情報基盤センター本館、クラスタ4には稼働率の高い研究室型の2棟が分類され、クラスタ3には食堂のある建物が分類されました。各建物の電力消費量の特徴を踏まえて適材適所の省エネルギー方策を選定することが今後の課題です。