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環境に関する教育研究

削減対象温室効果ガス一酸化二窒素の常時観測ステーション開設

自然科学系先端融合研究環 内海域環境教育研究センター
准教授 林 美鶴

一酸化二窒素 ( N2O ) は、京都議定書で削減対象となった温室効果ガスです。温室効果ガスの観測データは、世界気象機関の温室効果ガス世界資料センターが収集しています。図1はこのデータベースに登録されている過去に N2O を観測した地点 ( 約40地点 ) で、赤丸は1年以内にデータが更新された地点です。この数は二酸化炭素 ( CO2 ) ( 約140地点 ) に比べ圧倒的に少なく、人工衛星による観測も開始された CO2 やメタンに比べると N2O の現状把握は立ち後れていると言えます。N2Oの大気中濃度は CO2 の1/1000程度ですが、大気中寿命が長く、またオゾン層破壊物質でもあります。常時監視と排出抑制?削減が望まれるものの N2O の観測例が少ない理由として、優先度が低い、低濃度のため測定に手間がかかるなどが考えられます。

日本では、気象庁が1976年頃から岩手県綾里の標高260m地点で常時観測していますが、他は一時期の観測がほとんどです。神戸大学大学院海事科学研究科の海洋?気象研究室では、前身である神戸商船大学当時から大気-海洋間の熱?温室効果ガス交換について研究を行い、熱帯太平洋や日本沿岸で船舶による観測を実施してきました。このノウハウを生かし、神戸大学深江キャンパスで、日本で2地点目、日本の都市部では初めてとなる大気中 N2O 濃度の常時観測ステーションを設置しました。

観測は2009年5月から開始し、当初は深江キャンパスの中央に位置する総合学術交流棟の実験室で行っていました。しかしこの実験室は仕切りで区画分けされた共用実験室で空調の制御ができず、空調の発停に伴う急激な室温変動に対し明らかに濃度が影響を受けました。このため2010年3月に、5号館暗室に場所を移しました。図2は5号館屋上に設置した大気採取口 ( 地上約24m ) です。背景には阪神高速が見え、その下には国道43号線が通っています。図3は実験室内です。窓のない6畳程度の部屋で、急激な室温変化は起しにくく、室温も同時計測しています。また深江キャンパスでは一般気象観測も常時測定しています。今後、気象データとも照らし合わせながら、大気中 N2O 濃度の時間変動要因を解析し、また温室効果ガス世界資料センターにデータを登録して広く利用を促進する予定です。

  • 温室効果ガス世界資料センターに登録されているN2O観測地点
    図1 温室効果ガス世界資料センターに登録されているN2O観測地点
    ( http://gaw.kishou.go.jp/wdcgg/jp/wdcgg_j.html )
  • 深江キャンパス5号館屋上に設置した大気採取口
    図2 深江キャンパス5号館屋上に設置した大気採取口
  • 深江キャンパスに開設した大気中N2O濃度の常時観測ステーション
    図3 深江キャンパスに開設した大気中N2O濃度の常時観測ステーション

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