環境に関する教育研究とトピックス [環境に関する研究]

ICLEI Resilient Cities 2013 Bonnでの発表:
Prevention and Recycling of Food Waste in Japan: Policies and Achievements

経済学研究科 教授 石川 雅紀

「世界の食料不安の現状2012(FAO:国際連合食料農業機関)において、「2010?12年に慢性的栄養不足であるとされた人々は約8億7000万人と推定され、(中略)途上国人口の15%弱の人々が栄養不良と推定されている?」としています。また、「世界の食料ロスと食料廃棄(FAO)では、「世界全体で人の消費向けに生産された食料のおおよそ3分の1、量にして年約13億トンが失われ、あるいは捨てられていることを示唆している?」と報告されています。

日本国内に目を向けると、食料輸入量が約5,000万トン(平成22年度?農水省)である一方で、日本全体の食品廃棄物等の発生量は、2,086万トン(平成22年度)となっています。割合にしておよそ4割を捨てていることになります。日本では、先進工業国の特徴として、サプライチェーンのさまざまな場面や、家庭や外食といった最終消費の段階においてもたくさんの食べ物が廃棄されています。具体的にみると、平成22年度の推計値では、一般家庭から出る食品廃棄物量は1,072万トンで、そのうち食べられるものが200~400万トンあると考えられています。また食品由来の廃棄物は1,713万トンで、そのうち食べられるものが500~800万トンと言われており、食品ロスがいかに多いかが分かります。資源性や廃棄物性の両面からみても、日本の食品廃棄の実態は明らかに改善の余地があり、課題解決が迫られています。

この問題の対策として、日本では2001年に食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律(以下、食品リサイクル法)が施行され、2007年に改正されました。法律改正時に、業種別に食品廃棄物等の発生抑制目標を設定することが定められ、2012年に16業種について発生抑制目標が設定され、2014年には26業種まで拡大されました。これらの取り組み、特に、業種別の発生抑制目標の設定は、世界的にも例を見ない最先端の政策です。

世界的に食品ロス、食品廃棄物の問題への関心は高まっており、食品リサイクル法制定及び法律見直し時の審議会座長として、日本の経験は価値ある最先端の取り組みとして発信すべきものと考え、ICLEI Resilient Cities 2013 Bonnで発表し、多くの国の人とディスカッションをしました。

この原稿は、食品廃棄物等の循環利用?発生抑制と課題:食品リサイクル法を巡って(石川雅紀?小島理沙、国民経済雑誌、第207巻6号、平成25年6月)を元にしました。

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