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環境に関する教育研究とトピックス

環境に関する研究

集合住宅用高効率エネルギー供給システム

工学研究科  准教授 浅野 等

地球温暖化が問題とされ、化石燃料の使用で発生する CO2 の排出量削減が強く求められています。これに対し、太陽光や風力発電の自然エネルギーの導入、そしてエコカー減税やエコポイント制度による自動車や家電の買い替え促進が政府主導のもと進められています。

しかし、投入されるエネルギーの源流にさかのぼれば、自然エネルギーなど新エネルギーの供給量は消費エネルギー全体の約3%に過ぎず、約84%は石油、石炭、天然ガスなどの化石燃料に頼っている現状にあります※1。また、エネルギーの利用分野別の傾向を見ると、産業部門での増加が抑えられているのに対し、民生部門 ( 業務+家庭 ) でのエネルギー消費の伸びが大きく、その約4割を占める家庭での省エネルギーが求められています。エネルギー消費の無駄を減らすことはもちろんですが、風呂に入る回数を減らす、空調は使わないなど生活の質を変えることは避けたいところです。そのためには機器のエネルギー変換効率を高める必要があります。

家庭でのエネルギー消費を用途別にみると、暖房?給湯が全需要の約5割を占めており、その多くを化石燃料に頼っている現状からも、熱供給システムの高効率化を考える必要があります。ここでは、我々が研究をすすめている集合住宅用隣組コジェネレーションシステムを紹介いたします。

コジェネレーションシステム ( Co-generation system ) の Co- は、“二つの”を意味し、電力 ( 動力 ) と熱の二つのエネルギーを同時に供給するシステムを指します。発電所で使用される熱機関では、投入された熱エネルギーを全て電力に変換することはできず、残りは廃熱として環境に廃棄しています。コジェネレーションシステムでは発電機をユーザーの近くに配置し、廃熱を電力とともに供給します。廃熱の利用効率を高めることでエネルギー利用効率を高くすることができます。しかし、このシステムを家庭に導入するためには、二つの問題点が挙げられます。

  1. 小さいエネルギー需要: 都市への人口集中、核家族化の進行のため、一世帯当たりのエネルギー使用量は低下しており、小容量の発電機を使わざるを得ません。発電機は容量が小さいほど発電効率が低下、廃熱量が大きくなることから、熱が余りエネルギー変換効率が低下してしまいます。
  2. エネルギー需要の時間変化: 電力需要の時間変化が比較的小さいのに対し、熱需要は入浴での利用が大きいことから夜間に集中します。発電機からの電力、熱の供給量は運転状況で決定されるため、廃熱の利用率を高めるには大きな蓄熱槽が必要となり、多大な設置スペース、設置コストを必要とします。

これらの問題を解決し、日本の社会に適応させる新しいコジェネレーションシステムとして、“隣組コジェネレーションシステム”を提案しています ( 図参照 ) 。エネルギー供給の対象をマンションなど集合住宅とすれば、電力の総需要が増大し、大容量高効率熱機関の導入が可能となります。また、家庭での熱需要は入浴での利用が多く、高出力?短時間での使用なので利用者が多くなれば、熱需要の時間的ずれによる熱負荷平準化が期待できます ( 図参照 ) 。

従来の集合住宅用熱供給システムでは、同時使用時の熱量供給不足や熱需要が低い待機時の応答性確保のため温水循環量が過大に設定されており、配管からの放熱損失が問題とされていました。新しいシステムでは、一回の給湯利用を満たす程度の小型蓄熱槽が各家庭に分散配置され、それらを一本の配管で接続し、分散蓄熱を機能的に活用することで、温水配管を通じての熱供給量を大幅に低減できます。これは、配管寸法、ポンプ動力、放熱損失の低減につながります。蓄熱槽も小型であり、集合住宅の配管スペースへの設置が可能になります。

システムの実現には、発電機の高効率化はもとより、ユーザー間の熱供給の補助、蓄熱動作の制御など運用ロジックの検討が必要ですが、ユーザーのエネルギー利用の理解により更にエネルギー利用効率を高めることができるシステムであると考えています。

※1 経済産業省 資源エネルギー庁、 エネルギー白書 2009

図1 衝撃波殺菌のイメージ
隣組コジェネレーションシステム
図2 エネルギー需要の1日の変化
エネルギー需要の1日の変化 ( 1月 )

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