インドネシア泥炭湿地林保全に関する国際協力プロジェクトへの参加
国際協力研究科 准教授 橘 永久
鳩山前政権による温暖化ガス25%削減案?科学者による温暖化データ改ざん疑惑等々、地球温暖化に関するニュースを耳にしない日は珍しくなっています。この問題に興味を持っている方々には、Ban Ki-moon 国連事務総長による「合意に留意する ( formally takes note for Copenhagen Accord ) 」という巧みな言い回しが話題となった、2009年末の COP15 ( 国連気候変動枠組み条約第15回締約国会議 ) が記憶に新しいかもしれません。「留意する」ということは、温暖化ガス削減に関して正式には合意できなかったということです。先進国と途上国の対立が先鋭化したこのコペンハーゲンでの交渉において話題になった言葉に、REDD ( Reducing Emissions from Deforestation and Forest Degradation ) があります。ごく簡単に言えば、森林を保全することにより、保全努力をしなかった場合には排出されたと推定される炭素量を、排出権市場で売買できるようにしようという考え方です。1) 森林が残っている国にとっては新たな援助資金源となる可能性がある、2 ) 森林破壊からの二酸化炭素排出量が多量と推定されている、の2点から、REDDは、途上国?先進国双方から一定の支持を集めています。
昨年、日本学術振興会と国際協力機構の助成に基づき、「インドネシア?カリマンタン島南部の泥炭湿地林の保全と炭素管理に関する国際科学協力プログラム」がスタートしました。カリマンタン島南部は、シンガポールやマレーシアの航空機が飛べなくなるほどの煙害を引き起こす森林火災に直面している地域です。私は、経済学研究科の竹内憲司准教授とともに、このプロジェクトに経済学班として参加しています。最終目標は、森林保全?泥炭土壌保全と両立しうる経済システムを提案することです。環境問題は理科系の研究分野と思われがちですが、問題を引き起こすのは人間です。人々の行動を無理なく変えていく制度を構築しなければ、環境問題は解決しません。院生諸君の参加も促しながら、カリマンタンでの現地調査を続けていく予定です。