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環境に関する教育研究

東日本大震災に伴う被災した民族文化財調査

国際文化学研究科 教授 岡田 浩樹

本研究の目的は、宮城県が実施する地域文化復興支援政策の現状とその方向性を把握し、評価?分析することで、文化人類学や民俗学が可能な支援のあり方を方法論的?理論的に探求することである。神戸大学の研究者にとっては、阪神?淡路大震災およびその後の復興過程で得た知識や方法論を社会的に還元することは積極的な意義がある。

直下型地震による近代都市の災害が中心であった阪神?淡路大震災に対し、東日本大震災は広範囲の多様な地域社会が被災地であると同時に、長い歴史と民俗的?文化的伝統をもった地域コミュニティが特に津波によって壊滅的な打撃を受けた。東日本大震災における地震?津波は、祭礼行事や民俗芸能、食料確保に関わる伝統的な生業や工芸などのさまざまな在来知や技術といった民俗文化を保持してきた被災地の地域社会に多大な影響を今も与えつつある。東日本大震災への取り組みによって、阪神?淡路大震災の研究蓄積の上に看過されてきた、問題を明らかにしうる。南海トラフ地震など、今後の広域災害に対して、阪神?淡路大震災の蓄積の上に東日本大震災に関する学際的な研究が一層要請された。

本研究では、東北大学、東北学院大学をセンターとして、全国から民俗調査、地域社会調査のエキスパート20名が集まり、それぞれ被災地域を担当し、民俗文化財の被災状況とコミュニティの状況を現地学生のサポートを受けつつ調査を行い、その後の文化行政支援のあり方を検討する基礎資料を提供することを目的とする。実際に支援に関わった研究者や地方文化行政の実務家にも参加してもらい、それらの支援のあり方が、民俗学などの分野においていかに位置づけられるのか、その問題点と可能性を含めて検討を行う。また今回のような災害に直面した民俗文化財などの復興支援行政に対して、中長期的展望から可能な支援の方法と組織化について検討した。

神戸大学からは、国際文化学研究科の岡田浩樹教授 ( 松島、東松島担当 ) と梅屋潔准教授 ( 気仙沼担当 ) が2011年10月より震災による自然環境の変化と、生業 ( 特に養殖業 ) の関連、民俗文化財の現状とコミュニティの復興プロセスについての調査を実施し、東北大学で行われた3回の共同研究会に参加した。2012年3月に発行された予備報告書は、すでに文化庁、宮城県および宮城県内の各自治体?教育委員会?文化行政担当者に配布されている。こうして得られた情報や知識は、今後の震災?津波被害が想定される南あわじ市 ( 国際文化学研究科との地域連携自治体 ) 、あるいは高知市 ( 岡田教授は高知市史編纂委員 ) によって他地域に広く還元することも意図している。

なお、2012年度も本研究プロジェクトは継続が決定しており、また神戸大学の平成24年度東北大学等との連携による震災復興支援?災害科学研究推進活動サポート経費により、相補的な研究および教育プロジェクトとして展開する予定である。

『日本大震災に伴う被災した民俗文化財調査2011年度報告集』
宮城県地域文化遺産復興プロジェクト ( 平成23年度文化庁「文化遺産を活かした観光振興?地域活性化事業」 )

http://www.cneas.tohoku.ac.jp/staff/takakura2/shinsai/report.html

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