環境に関する研究
核融合と直接発電
工学研究科准教授竹野裕正
エネルギー問題は環境問題と表裏一体の関係にあります。最近の例で具体的に言えば、石油など化石燃料の燃焼 ( すなわちエネルギーの発生 ) に伴い二酸化炭素が発生しますが、これは地球温暖化という環境問題をより深刻化することになります。人類にとって欠かせないエネルギーをどの様に発生?利用すれば、よりよい環境を維持できるのか、両問題は常に同時に検討してゆかねばなりません。
私の専門である、電気エネルギーの発生 ( 発電 ) について考えます。現在の技術で、化石燃料の燃焼とは違う手段による発電方法として、太陽光発電や風力発電、あるいは原子力発電があります。他にも、研究開発中の発電法ならいくつもありますが、ここでは核融合発電を紹介します。現行の原子力発電は、核分裂という核反応でエネルギーを発生させていますが、もう一つの核反応である核融合を使うのが核融合発電です。しかしこの方法は、世界中で50年以上に渡って研究され、ようやく実用化の一歩手前にたどり着いたところです。また、発電所の建設には莫大な費用も必要とされたりします。
この様に困難を抱えていても研究が続けられる理由は、実現した際に多くの利点があるからです。かつては核融合発電の最大の利点と言えば、燃料がほぼ無尽蔵であることでした。現在では、現行の核分裂型原子力発電で放射能に関わる問題が深刻になるにつれ、放射能の問題を低く抑えつつ原子力エネルギーを利用できる可能性のある発電法として注目されつつあります。核融合には多くの種類の反応があります。現在の目標では、最も実現が容易とされる反応が想定されていますが、この反応では放射能の問題が大きく、核分裂型原子力発電よりも深刻な面もあります。この他に、実現の条件がより厳しいのですが、放射能の問題を大きく低減できる反応 ( 先進燃料反応 ) があります。先進燃料反応による核融合発電が実現すれば、二酸化炭素の排出をともなわず、かつ放射能に関わる問題を少なくでき、よりよい環境が維持されます。
私の属する研究グループでは、先進燃料反応による核融合発電の実現への一助になる、直接発電の研究を行っています。直接発電では、取り出したエネルギーを熱にすることなく直接電気に変えるため、高い発電効率が期待できます。これは、取り出したエネルギーをより有功に利用し、経済面から発電を実現し易くします。先進燃料反応の核融合自体、実現ははるか先ですが、直接発電もまだまだ知見や技術が足りません。環境が厳しくならない今のうちから研究を進める必要があります。