環境に関する教育研究とトピックス

環境に関する研究

過去?現在?未来の気候変動研究

人間発達環境学研究科 助教 窪田 薫

私も参加した国際掘削航海の成果が、著名な英科学誌Natureに掲載されました。この研究は、南アフリカの沖で掘削された海底堆積物の分析によるもので、過去150万年間、南極由来の氷山が氷期の大西洋子午面循環のモード変化を駆動していたことを明らかにしました。

私は現在、アフリカ沖の別のサイトで掘削された海底堆積物中の浮遊性有孔虫の化石の化学分析を通じた研究に取り組んでいます。科学研究費補助金基盤研究(B)「過去700万年間の大気中二酸化炭素濃度の連続記録の作成」が2020年に採択され、研究代表者として研究を進めているところです。過去の大気の二酸化炭素濃度は、有孔虫の殻にホウ素同位体(δ11B)という形で保存されています(下図)。このユニークな研究手法についてまとめた日本語の論文は、日本地球化学会「奨励賞」受賞記念論文として、2020年に学会誌「地球化学」に掲載されました。

有孔虫の殻のホウ素同位体分析は、殻の中のホウ素含有量が非常に小さいこと、実験環境中で容易に汚染されやすいことから、特に分析が難しいことで知られています。日本国内では私の研究グループしか分析に成功していません。

過去の気候変動を研究する分野を「古気候学」といいます。古気候学は将来の地球温暖化予測にも役立つ情報を多く提供しています。神戸大学 国際人間科学部 環境共生学科における授業?実習を通じて、古気候学の普及と、将来の人為的気候変化の危険性を啓蒙する活動に努めています。また、2020年度は高大連携事業の一環で、兵庫県立小野高校の高校2年生に対して現在進行中の人為的気候変化に関する出張授業を行いました。

浮遊性有孔虫の電子顕微鏡写真と、海底堆積物を用いた二酸化炭素復元の概念図