砕石副産物を利用した環境配慮型コンクリートの研究開発|神戸大学 環境報告書2020_必威体育

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砕石副産物を利用した環境配慮型コンクリートの研究開発

農学研究科 助教 鈴木 麻里子

骨材供給構造の推移

「砂」は水に次いで最も乱用されている資源であると言われ、日常生活のありとあらゆる場所で利用されています。特に私たちの生活を支えるコンクリートの製造には、多くの砂や石を必要とします。良質なコンクリートを製造するためには、良質な骨材(石や砂)の使用が望ましいとされ、これまで多くの川砂や海砂利などの天然骨材資源を消費してきました。しかし、良質な天然骨材の枯渇や環境保全の観点から、採取禁止の動きが広まり、近年、コンクリート骨材は人工骨材である砕石や砕砂に遷移しました。一方で、砕石や砕砂を製造する際に、大量の砕石副産物が発生し、その有効利用が強く望まれています。砕石副産物の一つである「砕石粉」は、コンクリート用混和材としての利用の検討がなされ規格化されていますが、砕石粉の優位性や性能に関する十分な検討がされておらず、積極的に砕石粉を使用したコンクリートの実例は多くありません。

そこで、私たちは砕石粉の利用拡大を目指し、砕石粉を配合したコンクリートの諸特性を明らかにする研究に取り組んでいます。砕石粉を異なる比表面積で分級し、コンクリートに添加した研究では、比表面積の大きな砕石粉、すなわち粒径の小さな砕石粉は、コンクリート中の水分を拘束してしまい著しくコンクリートの流動性を低下させることが明らかとなりました。よって、砕石粉の比表面積を限定して、コンクリートに添加することでコンクリート性状を損なうことなく砕石粉を再利用できる可能性が示唆されました。今後も‘天然骨材の減少’と‘砕石副産物の有効利用’という双方の問題を解決するために、包摂的かつ持続可能なSDGsの概念を盛り込んだ再利用フロー構築を目指した様々な研究を展開していきたいと考えています。

(参考文献)鈴木麻里子、松家武樹ら:比表面積の異なる砕石粉が砕砂モルタルの流動性に及ぼす影響,
      農業農村工学会論文集,No. 309 (87-2), pp.Ⅰ_143-Ⅰ_148,2019

(関連情報)施設環境学研究室:http://www.research.kobe-u.ac.jp/ans-hysteng/index.html

砕石粉
コンクリート供試体